「過去と他人は変えられない」って、本当にそう?~「意味付け」で拓く新しい視点~
心理カウンセラーとして活動していると、よく「過去と他人は変えられない」という言葉を耳にします。これは確かに真理で、自分の力ではどうにもならないことに囚われるのではなく、自分自身と未来に焦点を当てていくことの大切さを伝える言葉です。私もこの考え方には深く同意します。
でも、本当にそうでしょうか?私はあえて言いたいのです。「過去も他人も、形を変えて変えることができる」と。
過去は「意味付け」で書き換えられる
過去に起きた出来事そのものをなかったことにはできません。タイムマシンに乗って過去に戻ることは不可能ですからね。しかし、私たちは過去の出来事に対する「意味付け」を変えることで、その過去が持つ影響を大きく変えることができます。
例えば、あなたがかつて、大切にしていたプロジェクトが途中で頓挫してしまった経験を思い出してみてください。 当時のあなたは、「自分の力不足だ」「せっかくの努力が水の泡になった」と深く落胆し、その出来事を「無駄な時間だった」「失敗作」と「意味付け」したかもしれません。
しかし、長い年月を経て、今、その経験を振り返った時にどうでしょう? あの時の悔しさや葛藤があったからこそ、あなたは計画の重要性を深く学び、困難な状況での粘り強さを培ったのではないでしょうか。あるいは、その経験がきっかけで、新たな人脈や予想もしなかった分野への興味が生まれたかもしれません。
今ではあの頓挫したプロジェクトは、「次のステージへ進むための不可欠なステップ」「自分を鍛え、新たな道を示してくれた転機」という「意味付け」に変わっているのではないでしょうか。するとどうでしょう?過去の失敗は、もはやあなたを縛り付けるものではなく、今のあなたの知恵や器の大きさを語る上で欠かせない財産になったはずです。
このように、過去の出来事に対する「意味付け」を能動的に変えることで、私たちは過去の呪縛から解放され、前向きな力に変えることができるのです。これは、ある意味で「過去を変える」ことに他なりません。
他人は「気づき」から変わってもらえる
「他人を変えることはできない」というのも、その通りです。私たちは誰かの思考や行動を直接コントロールすることはできません。しかし、私は「他人はその人自身の「気づき」から変わってもらうことはできる」と考えています。
例えば、職場の部下や同僚とのコミュニケーションで、なかなか意図が伝わらず、もどかしさを感じている状況を想像してみてください。あなたは直接「もっとこうしろ」と命令する代わりに、彼らが自ら「気づく」ための環境を作ってみるとします。
具体的には、彼らの意見にこれまで以上に耳を傾けたり、仕事の目的や背景を丁寧に伝え、彼らが全体像を理解する手助けをしたりするのです。あるいは、彼らの小さな成功を具体的に認め、自信を育むようなフィードバックを心がけます。
そうするうちに、彼らは「自分の意見にも価値があるんだ」「この仕事の真の意義はここにあったのか」「もっと工夫できることがあるかもしれない」といった**「気づき」を得ることがあります。この「気づき」こそが、彼らの自発的な行動変容**を促し、結果としてパフォーマンス向上や良好な人間関係へと繋がる原動力となります。
他人が変わるのは、あなたが強制したからではありません。あなたとの関わりや対話を通じて、その人自身が「変わりたい」と心から思い、行動を選択した結果なのです。
まるで、固く閉ざされた扉の鍵は内側からしか開けられないように、人の心もまた、自らの意志によってのみ開かれるのです。私にできるのは、その扉を開けるための「気づき」という小さなきっかけを提供すること。これは、回り道に見えて、実は最も確実な「他人を変える」方法だと信じています。
「意味付け」と「気づき」が織りなす未来
「過去と他人は変えられない」という言葉は、私たちに「コントロールできないもの」への執着を手放すことの重要性を教えてくれます。しかし、それに加えて、「過去の「意味付け」を変える」ことと、「他者の「気づき」を促す」ことで、私たちはより豊かな未来を創造できるのではないでしょうか。
人生の出来事も、人々との関わりも、私たちがどのような「意味付け」をし、どのような「気づき」を促せるかによって、その様相は無限に変化します。
あなたは、過去のどんな出来事に、どんな新しい「意味付け」を与えたいですか?そして、大切な人のどんな「気づき」のきっかけになりたいですか?
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